「きゃっはっはっ!キョーンー!飲み足りないんじゃないのー?」
おかしい、おかしすぎる。なんなんだ、この状況は。
「キョン、暗いわよー!ほら、飲んで飲んで。」
ちくしょう、なんでこんなんなっちまったんだ・・・。
今日は休日、日曜日。
不思議探しツアーだか、ぶらり街歩きだか。
最近じゃもう分からなくなっちまってるが、いつものヤツに出るべく俺は自転車を走らせていた。
今日はいつもより若干早め、10分前くらいに待ち合わせ場所には到着したのだが・・・。
「あれ、他の奴らはまだなのか?」
「今日はみんな欠席だって。全くどういうことなのよ!?」
言ってる言葉のわりにはあんまり怒ってるように見えないな。
何を企んでいるんだか・・・。
「仕方ないわね。いつもどおり喫茶店行くわよ。」
今日はグループ分け必要ないから喫茶店行かなくていいんじゃないか?
「そういうもんじゃないの、バカキョン!とにかく行くの!」
例のごとく腕を引っ張られて連行されるのだ。
・・・抵抗する?んなこと考えるものか。
100ワットの瞳を輝かせたハルヒに俺は勝てない。
んなことは5月の時点から分かりきってたことだ。
しかし今日のハルヒは柄じゃなかった。
瞳を輝かせてどんな悪行を考えてるのかと思いきや、
普通にお茶して、ウィンドウショッピングして。
その後は昼飯食って、カラオケ行って、川沿いを散歩して・・・。
ああ、そうさ。楽しかったさ。
平凡なる日常の1日。
仲の良い高校生同士が、いかにも高校生らしいことをして遊ぶ。
一応は黙ってれば美少女のハルヒと2人っきりでだ。
谷口が見たら早合点して卒倒するだろうね。
・・・まるで付き合いたてのカップルみたいだったからな。
夜は少しばかり背伸びして洒落た店でディナー。
街歩きの最中に目ざとくハルヒが見つけたんだ。
高校生の俺らでも手が出なくもない程度のいい店だったな。
しかしここで大人しくソフトドリンクを頼んでおけばよかったものを・・・。
そして冒頭に戻る。
ハルヒに酒飲ませたらダメだってことは合宿の時に散々悟ったはずなのに。
”人は同じ過ちを繰り返す”
嫌というほどこの言葉の意味を噛みしめたさ。
さぁ、ヤケクソだ。上機嫌になったハルヒの酒癖をここで紹介しよう。
まず陽気になる。
そして笑いが止まらなくなる。
人をポカポカ殴り始めたら危険信号だ。
誰彼構わず溢れるほど酒を注ぎ、同じだけ自分でも飲む。
こうなったらもう手をつけられないね。
元来ハルヒの行動を抑制できたことなどほとんどないのだが。
「キョ〜ン〜。あんた急に黙りこくっちゃってどうしたのよぅ。」
気づいたらハルヒが真横にいる。
う、上目遣いはやめろ、反則だ。
「あ、キョンが赤くなった〜。それっ!こうしちゃおっと!」
ハルヒの唇が近づいてくる。
・・・待てよ、
・・・落ち着けよ、
・・・いいのかよ!?
・・・おい、ああ〜!!
こてっ
やおら俺の膝の上に仰向けに頭を落っことすと、ハルヒは笑い出した。
「キョーンー。」
な、なんだ?
「一生離さないからね。」
ハルヒはそれだけ言い終えると、まぶたを閉じて寝息を立てだしやがった。
その寝顔は・・・悔しいことに朝比奈さんと同じくらい魅力的だったさ。
ちくしょう、なんて気の迷いだ!
結局その後は呆然としたまま・・・
店員にラストオーダーを聞かれるまで俺はハルヒに膝枕をし続けたのだった。
俺はまた同じ過ちを繰り返しそうだ。
酔っぱらったハルヒは手をつけられない
・・・ほどに可愛かったからなぁ・・・
・・・俺も重症かな、こりゃ・・・
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