「全く、大学入ればもうちょっとマシかなと思ってたけど全然!」
「おもしろいヤツもいなければ不思議なことも見つからないか?」
「あーあ。けっこう期待してなのになぁ。入る大学間違えたかな。」
ただ今、俺とハルヒは電話中だ。
今、俺たちは大学1年生。
ハルヒは持ち前の負けん気の強さを見せて、日本でも5本の指に入る大学の医学部に合格。
そして大学の近くのアパートで一人暮らしを始めている。
俺も奇跡的に地元の大学に合格し(ギリギリの補欠合格だったが)、無事大学生活を始めているのだった。
高校時代の3年間は、1年のときとそれ程変化があるわけでもなく過ぎていった。
まぁハルヒも落ち着いてきて、それなりに高校生活を楽しんでいたし、
俺もなんの不満もなくSOS団の仲間とバカなことやって楽しんでいた。
まぁ・・・。周りでは俺たちが付き合っているかのような妄言をほざくものもいないではなかったが。
そんな気分にはなることもなく、変わらない関係であり続けていた。
・・・大学に入って変わったのは、そんな俺たちの感覚だったろうか。
特急で1時間程の街で一人暮らしを始めたハルヒが週末こちらに戻ってくることもある。
逆に俺も遊びに行くこともちょくちょくあったりする。
今みたいなたわいもない電話をする機会も増えた。
有り体に言えば・・・。適度な距離感が俺の心を惑わせたんだな。
うむ。きっとそうに違いない。
どちらも何かそれっぽい事を言ったわけではないのだが、確実に俺たちの関係は変わりつつある。
それぐらいは俺でも分かっちまうんだ!悲しいことにな。
「ところで、今週末はどうするのよ?あ、そうだ!うちの近くに鶴屋さんの家の古屋敷があるのよ!
そこの蔵を今度掃除するらしいの。これは何かとんでもないものを手に入れられるチャンスよ!」
「あー。スマン。週末はちと教授の雑用を言い渡されてだな・・・」
「え、あ・・・。そうなの。
まぁあたしが鍛えたおかげでキョンも雑用くらいは人並みにできるようになったんだしね!
こっちはあたし一人でもなんとかなりそうだし、せいぜい頑張りなさいよ!」
そんな憎まれ口を早口で叩きながらもハルヒの口調が一気にトーンダウンしたのが分かる。
・・・あー。俺も大概ヤキが回ったもんだ。
「・・・ということもあるんだが、それはまぁアホの谷口にでも任せればいいだろう。行くか、その鶴屋さん屋敷に!」
「よーっし!さっすがキョン!そうこなくちゃ。さぁ、今から準備しないとね。必要なものは・・・」
・・・これであの教授の単位はないな。まぁいいか。
あんなハルヒの声聞かされたらこうしないわけにもいかなかったんだ。
くそ、しかしあっさり元気になりやがって。
どーも俺の人生はハルヒに狂わされるためにあるようなモンみたいだな。
「ちょっと!キョン聞いてるの!行くとなったら絶対すんごいモノを発見するんだからね!」
さーて。谷口に拝み倒して、雑用代わってもらわないとな。
それと夏服があまりないから買っておかないとな。
ついでだ、美容院にも行っておこう。髪もちょうど伸びたところだ。
・・・あー。俺も大概ヤキが回ったもんだ。
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