常々思うんだが、大学生ってのは実にいいもんだ。
朝の授業なんてほとんど取ってないから昼まで自由に寝ていられるし、サボりも問題な
い。
三年間毎日後ろの席からやいのやいのとうるさかったハルヒもいない。
当然毎度毎度俺の奢りでお茶することも・・・ないはずだったんだが。
なぜか今俺達はみんなで喫茶店にいる。あー、もちろん平日の真っ昼間だ。他大に行って
るハルヒや長門はいない。
今日のメンツは朝比奈さんと古泉、それと阪中の四名だ。
偶然ばったり会っただけなんだが、なんで俺が奢るハメになってんだ?
「こないだ例のバイトでボーナスでたらしいじゃないですか。いやぁ、さすがあなたで
す。
紹介した僕としても鼻が高いというものですよ。」
・・・まぁ簡単に説明すると、だ。奇跡的に合格も決まって遊びほうけていた俺はあっという間に金欠病に陥ったわけだ。
そこで前々から美味しいバイトがあると言っていた古泉に働き口を紹介してもらった。
「機関」とは直接の絡みは無いらしいし、使えるものはトイレットペーパーの芯でも使っ
てやろうと思えるまで成長したんだ、俺も。
「うわぁ、キョン君凄いですね。特別ボーナス貰えるなんて。」
あなたに誉められると天にも昇るような心地ですよ、朝比奈さん。
「いいなぁ、私にも何かバイト紹介してよね。」
阪中はまだバイトしてないのか。家は金持ちだもんなぁ。
「そうですね。ウェイトレスでも病院事務でも、着ぐるみバイトから家政婦までなんでも
紹介できますよ。」
それって部室に衣装あるのばっかりじゃないか。衣装仕入も古泉が絡んでたのか?
「いえいえ、物の例えですよ。」
それにしても、たまにはこんな集まりもいいもんだな。平和で。
「ところで涼宮さんは最近どうしてらっしゃるのですか?」
なんで俺に聞くんだ?古泉よ。
「だって毎週逢っているんでしょう。わざわざ毎土日に朝早く出かけて。」
あー。それはだな、俺が未だにSOS団団長専属雑用係としてこき使われてるということ
であってだな・・・。
「キョン君って意外と素直じゃないのね。」
阪中、お前だけは信じていたんだが・・・。そしてやっぱりその名を使うんだな。
「そんなこと言ってるとハルヒちゃんも悲しむよ?あのこもけっこう繊細なんだからね。」
そりゃ現状認識にアリと象ほども差があるな。チェーンソーでも切れないくらいの図太さ
だと思ってたんだが。
「はいはい。そういうことにしといてあげますよ。」
・・・その後は近況報告やら、なんだかんだと喋って今日は散会となった。
古泉は阪中と同じ授業だそうで二人で去っていった。
ちなみに俺がSOS団でハルヒに振り回されている間に、あの二人は気づくといい仲になっていた。
本当に油断も隙もならない奴だ。まったくな。
しかしお陰で大学屈指の美少女朝比奈さんと二人で歩けるんだ。感謝してやるか。
「いいですねぇ、古泉君もキョン君も決まった相手がいらして。」
いえいえ。朝比奈さんならよりどりみどりですよ…って突っ込みどころはそこじゃない。
「古泉はともかく俺にはそんなのはサッパリないですよ。」
「うふふ。そんなこと言ってるとハルヒさんに言いつけますよ?」
全く、またハルヒか。みんなしてどうかしてるよな。
「今週末もまた逢われるのでしょう?」
会うの漢字が違いますよ。そりゃ誤変換です。
それにさっきも言ったように使い勝手のいい雑用係としてこき使われてるだけですって。
「たまには私たちも誘ってくれるようにお願いしますね。」
朝比奈さんまで俺の話を聞いてくれない・・・。
みんな冷たくなったもんだ。世も末か?世紀末はとうに過ぎたはずだが。
「・・・というわけで、たまにはまたSOS団みんなで集まらないか?」
「そうねぇ。確かに古泉くんやみくるちゃんには最近会ってないもんね。」
ほとんど日課となってるハルヒとの電話だ。もちろん電話代は俺持ちだがな。
「よし!みんなのことについてはあたしの方でも考えておくわ。
土曜日はいつもの場所だからね。たまにはあたしより早く来て見なさいよ?」
相変わらず、待ち合わせの早さじゃハルヒたちにはかなわないんだよな。
「努力だけはしてみるよ。それじゃ土曜、いつもの場所でな。」
「うん!おやすみー!」
・・・しかし俺は知ってるんだ。ハルヒが意外に待ってる時間を楽しんでることをね。
待ち合わせ場所で俺を待っているハルヒを遠くから見ると、なんだか落ちつかな気にソワソワしてるんだ。
そのときの表情がなんというかな、これまた意外に女の子らしい顔してんだよな。
どうも話を聞いてると、待ってる間にいろいろと考えてるのが楽しいらしい。
どうせだったら俺に思いやりのあることを考えてくれればいいんだがね。
ま、ハルヒの楽しさを奪うこともないだろうし、早く行ったって奢らされるんだ。
ゆっくりと準備して、土曜に備えるとしようか。
遅刻だけはしないようにな。
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