ハルヒのいない部室。なんて平和なんだろうか。
市販したら1万円は下らないんじゃないかとすら思える、
朝比奈さんの淹れてくれる極上の玉露を飲みつつ、優雅に古泉とチェスを打つ。
嗚呼、素晴らしい。まさしくこれこそ俺の望んだ世界だよ。
・・・しかし世に平和な刻というのは長持ちしないもので。
聞こえてきたぞ、遠くから文芸部室めがけて走ってくる悪魔の足音が・・・。
バンッ!!!!
「やっほー!!突然だけど、みんなにアンケートを取るわよ!」
当然のようにノックもなく扉を開け放ったハルヒは、唐突にこんな台詞を放ちおった。
ま、俺や朝比奈さんに迷惑のかからなそうなことならなんでもいいぞー。
「質問は1つよ。しっかりと考えて答えなさい!」
はいはい。どんなアンケートだ?次に行く不思議スポットの希望とかか?
「ドラ○もんの道具を1つ貰えるとしたら、何を貰うか!さぁ考えなさい!」
また訳のわからんことを言い出したな。
「ところで、このアンケートは何に使うんですかー?」
さすが朝比奈さん、いい質問だ。
「そんなのはどうでもいいでしょ!さっさと考えて!」
さすがハルヒ、一刀両断だ。
しかし、秘密道具か。何でも貰えるもんなら貰っておきたいものだが、1つと言われたらどうするか。
「よし、それじゃまずはみくるちゃん!1発目いってみよう!」
「え、あ、えっと・・・、タ、タケコ○ターなんか欲しいですー。」
「その心は?やっぱ空を飛んでみたいってわけ?」
「そうですねー。空を飛ぶのって憧れるじゃないですかー。」
やっぱり朝比奈さん、なんとなく夢のあるご回答だ。
しかし朝比奈さんの来た未来でも空は飛べないのか。少し夢がなくなったぞ。
「あたし思うんだけど、あんな飛び方したら絶対首がもげるんじゃないかしら?よし、次は古泉君!何が欲しい?」
「僕は四次元ポ○ットが欲しいですね。あ、いえ。もちろん中身は別としてですよ。」
「へぇ?意外っちゃ意外ね。なんで?」
「どこにでも何でも持っていけるのは素敵じゃないですか。物を片付ければ僕の部屋も少しは広くなるでしょうし。」
お前だったら、あの異次元空間に適当に放り込んでおけばなんとかなるんじゃないかい?
「ふぅん。確かにそれもよさそうね。それじゃ次は有希ね!」
「・・・グルメテーブ○かけ」
なんか最近、長門のキャラが変わったように感じるのは俺だけか?
「それも捨てがたいわねー。なんでもタダで食べられるのは魅力的だわ。キョンに奢らせるにも限度があるしね。
さ、それじゃキョン!あんたは何よ?」
何を言っているのやら。しかし、俺の答えはどうするか・・・。
やたらワクワクとしているハルヒの目を見ると、簡単な答えを出すのは躊躇してしまうのだが。
「あ・・・。俺は、やっぱりどこでも○アかな。朝、ギリギリまで寝ていられる上に坂も登らなくていい。
しかも遅刻もしないだろうから奢らされる心配もないぞ。」
ダメだ。捻りのない回答しか思い浮かばんかった。やはり俺には芸人の才能はないようだな。
「まぁアンタらしいわね。それで夜這いなんてしないでよ?」
するかっつーの。
「さぁ、最後はあたしね。みんな、そんな道具じゃまだワンパンチ足りないわよ。もっといい道具があるじゃない!」
なんだ?四次元ポケ○トでなんでも取り出せるってセンは消えてるしな。
・・・やっぱり俺にはなんも思い浮かばないな。
「それはね・・・、もしもボッ○スよ!」
もしも○ックス・・・それは、もしも〜な世界だったら、と申し出ればその通りの世界になる道具!
「これさえあればなんでもOKだわ。
もしもあたしだけ空を飛べる世界だったらって言えばタ○コプターなんかいらないし、他にもなんだってできるわよ!」
あー。そりゃ確かに盲点だった。
超メジャーな道具ってわけではないくせに、意外と強力だぞ、もしもボ○クス!
「それに、こいつを使えば宇宙人も未来人も、超能力者も異世界人も思いのままよ。みんな友達になれるわ!」
・・・えーとな、ハルヒよ。そのうち4分の3は既にコンプリート済みなんだが・・・。
見回すと、古泉も朝比奈さんもどこか空々しい顔をしている。
あの長門ですら本から目を離して虚空を見ているし。
「さ、この話はここまでよ!次は久しぶりのミーティングよ、今週の不思議探索についてなんだけどね・・・」
しかし、もし○ボックスか・・・。
まったく、ハルヒのご機嫌な脳ミソから繰り出される「もしも」は俺を困らせるものばかりだからな。
次は、そうだな。
俺が半分以上は傍観者で、なおかつちょっとだけ刺激がある「もしも」をよろしく頼むぞ。
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